景気対策>>>構造対策でしょう……どう考えても

 今日もぼんやりとテレビを眺めていると、ここのところの株価暴落のニュースでコメントしていたのが、テレ東のWBSでおなじみの日本総研副理事長・高橋進氏。氏の、日本は内需を喚起することが急務だという意見には尤もだと思ったのだが、そのためには国民の社会保障への将来不安を払拭することが必要だというのに疑問を感じた。
 そういう長いスパンの話をここでするのは、ちょっとズレているのではと思ったのだが、限られたコメント時間のなかで、あえてそういう視点に言及するやり方もあるのかとも思った。これで充分な余裕があればどうなるのか、日本総研のサイトに行ってみたら、高橋氏の主張が述べられていた。タイトルにある「景気対策より構造対策」という文言だけでもう充分な感じがしないでもなかったが、いちおう目を通してみる。

 問題は、将来不安が消費マインドの落ち込みを加速させているとみられることであり、将来不安の根源には、社会保障制度に対する信頼低下があると考えられる。
 (……中略……)低所得層を底上げすることは重要な政策課題であるが、その場合には、所得税社会保障給付、年金改革などとの整合性を確保しつつ政策の中身を詰める必要がある。これをないがしろにして減税だけを行ってもその効果は薄く、そのツケ(財政赤字の拡大)だけを将来世代に残すことになる。


QUOTE ▶ 日本総研:副理事長・高橋進の主張 | 景気対策より構造対策−問題は自民党総裁選後の挙党体制−


 高橋氏の、国民の社会保障への信頼低下という状況があって将来不安を生んでいるという見方はその通りだと思うし、それが消費マインドに悪影響を与えているというのも頷ける。
 しかし、医療、介護、年金などの社会保障制度と税制を含めた改革の必要性があるとしても、それらが、一般的な財政・金融などの経済対策よりも優先して行われるべきものとはとても思えない。消費マインドを冷え込ませている要因としては、やはり目先の収入が伸び悩むであろうという予測のほうが圧倒的に大きいのではないか。


 そうした不安を和らげるには、社会保障制度をいじっても迂遠に過ぎる。ここはやはり金融政策で実質金利を下げることによって投資を支え、企業の資金繰りを助け(それは雇用や賃金を守ることにも繋がる)、必要なら減税や公共投資などの財政政策も行い、直接可処分所得を増やすことなによって消費マインドを回復させるべきではないかと思う。


 高橋氏は、ほかでも資源価格の上昇への対応についても言及しているが、「円高にすべし」との御託宣で、これもさすがにどうかと思った。外需頼みの体質が良くないという意図はわからないでもないが、わざわざ輸出企業の首がしまるようなことをやるべきとはやはり思えない。