日雇い派遣規制は、かえって非正規労働者を追いつめることになるし、低賃金だから悪い、というわけでもないよ。

 労働者派遣法の改正を検討してきた厚生労働省の審議会は、専門性が高い18の業務を除き、30日以内の「日雇い派遣」を原則禁止すべきだとする報告書をまとめました。厚生労働省は、この報告書を基に労働者派遣法の改正案をまとめることにしています。
 「日雇い派遣」は、短期間の契約を繰り返しながら労働者を派遣するもので、賃金が低く、雇用が不安定なうえ、安全対策も十分でないことから、厚生労働省の審議会が労働者派遣法の改正を検討してきました。(……中略……)また、違法な派遣を防ぐため、問題が明らかになった場合には、厚生労働省が派遣先の企業に対して直接雇用するよう勧告できる制度も導入すべきだとしています。厚生労働省は、この報告書を基に労働者派遣法の改正案をまとめ、国会に提出することにしています。「日雇い派遣」は規制緩和に伴って急速に広がり、ワーキングプアを生んだ原因の1つとも指摘されてきましたが、初めて規制の強化にかじが切られることになりました。


NHKニュース | 日雇い派遣 規制強化へ報告書


 多分、日雇い派遣規制についてはあちこちでいろんな人が既に書いていると思うけど、一応、自分なりに反対意見を表明しておこう。


 まず、低賃金や不安定雇用は、それ自体は悪いことじゃない。それは若くて経験の浅い者でも雇いやすくなるってことだ。その安月給も最初のうちだけ、経験を積んでしだいに熟練して来れば、他所に逃げられないように会社は給料を上げるだろう。もしそうしなければ、もうすこしましな条件で他所へ転職できるだろう。そういういい循環を担保するのが、経済成長。


 そもそも経済成長がゼロなら、公的年金は国内の資金運用成績もゼロで破綻だし、公的健康保険だって高齢化が進むなか、国庫負担一定で今の医療水準を維持したら、いずれ破綻する。


 今の日本は経済成長率が下手すりゃマイナスだ。こんな状況下で日雇い派遣を禁止し、かつ完璧に取り締まったとする。いままで日雇い派遣を使っていた企業は、通常の派遣社員以上の待遇でしか人を使えなくなるとどうするだろう。

  1. 人件費増で利潤が減るのを受け入れる。
  2. 雇う人数を減らして人件費を抑制し、残業で業務をまわす。


 などといったことが考えられるが、前者の場合は、製品値上げによって製品の納入先(消費者も)に、また中間材の買い叩きによって下請に、損害がどんどん波及するし、後者の場合は、生産量が減る可能性が高く、そもそも人減らしをしているから失業率が悪化してしまう。
 日本中でこうしたことが起これば、経済成長率はさらに鈍化、景気も悪化するので、企業はさらに雇用をしぼるだろう。そうなれば正規雇用どころか、派遣ですら雇ってもらえなくなる。


 このように日雇い派遣規制強化は、非正規労働者を救うどころか、かえって追いつめる結果となる。それでもやるのか? やるんだろうな。