日本のHIVの実態ーー高齢化する感染者


 「とくダネ!」で特集しているHIVの問題、昨日までは、南米ガイアナの状況のレポートだったが、今日の舞台は日本。エイズといえば、若者の病気というイメージだったのが、近年高齢化が進んでいるというのはちょっと驚きだった。先進国で唯一感染率が上がっていることは知っていたのだけれど。

 たしかに考えてみれば、エイズはすでに死病ではなく、薬物療法によってコントロール可能な疾患だ。エイズ患者の余命が長くなれば、感染者ぜんたいの平均年齢が上がっていくのは当然だ。それに加えて、中高年女性の閉経後のセックスが、妊娠の危険性が無いがためにコンドームを使用しないことが比較的多く、高齢での感染リスクを高めているという。
 感染者の高齢化がすすむと問題になるのは「介護」だ。エイズへの偏見(HIVは感染力が弱い)はかつてよりは弱くなったとはいえまだまだ根強く、高齢のHIV感染者を受け入れてくれる介護施設はほぼ皆無だ。これまでのエイズのイメージ(感染するのは都市部の若者やゲイ)なら、もともと偏見の少ないクラスタ−の人材が感染者の支援をする図式が可能だった。しかし高齢者介護は曲がりなりにもすでに確立された仕組みがあり、それに従事する人材も、サービスを享受する老人たちも、エイズ感染者の介護など想定していないから、無理からぬ面もある。
 地方なんかだとエイズへの露骨な差別もある。日本の中高年の患者は、海外買春ツアーで感染したケースが多いことが否定できず「感染者は自業自得」とばかりに差別が正当化されてしまう面がある。そうすると感染者の側も差別されても仕方ないと思ってしまいがちになる。さらに中高年のセックスがタブー視される日本という国では、ますます感染者が感染の事実をオープンにしづらい面があるのではないか。番組中に仮名で登場したある高齢の感染者も「エイズのことは墓場まで持っていく」と話していた。 
 
 解決は恐ろしく困難だ。まず、日本では1000人に2人しか、HIV検査を受けていないという現状をどうにかしないと正確な感染状況すらつかめない。そして、HIVウィルスへの偏見の是正、感染予防は教育しかない。差別意識にかんしてはもうお手上げかもしれないが、高齢者のセックスをタブー視しないで、そのあるべき形を論じていくことから始めるしかないのかなと思う。