食糧安保論こそが搾取だ

 食糧自給率を上げなければならない、という集団ヒステリーが、今日本中で猖獗を極めている。
 かつてはその理由として食糧安保論がいわれた。もちろんこんなのは、作物をつくり消費地へ輸送するのに大量の燃料が必要であることを考えれば、すぐに無意味である事が理解できるはず。食糧が輸入できず、かつ石油だけが輸入可能な状況はちょっと考えにくい。近隣諸国が輸出を止める? たとえ自国民が飢えてもカネのあるところに売ってくれるってば、ってのは極端にしても、そんな状況を想定しなければいけない時点でもう完全に国を誤ってるんだから、その前になんとかすべき。
 

 最近は食糧安保論だけでなく、輸入食品は危ない、国産品を食べようということで、自給率を上げろの大合唱がまたぞろ高まっている。

信州レタス、支える中国人615人――ルポ にっぽん(asahi.com)

 研修生に支払われる手当は月々8万5千円。時給換算すると約530円。長野県の最低賃金669円以下だが、7カ月で帰国する彼ら研修生には最低賃金法は適用されず、合法的な額だ。ほかに受け入れ農家は、研修生の渡航費や光熱費、米代も負担する。

 おいおい、最賃以下で働かすのかよ。実質出稼ぎ単純労働者じゃん、どう考えても違法。

 20年ほど前まで、農繁期の川上村には若い日本人があふれた。日当6500円に残業代を含め1万円、3食付きで宿泊代もタダ――。そんな募集広告を「フロムA」など求人誌に載せれば、大学生や高校生が押しかけた。
 それが十数年前から、働き手不足に陥った。農家の伊藤嘉武さん(63)は「求人を出しても日本人が集まらねえ。来ても3日ともたずに逃げ出すようになった」と嘆く。腰をかがめての植え付け、未明から始まる収穫、重い箱の運搬。実入りはよくても、きつい仕事が嫌われるようになった。
(中略)「中国人研修生はもはや欠かせない労働力。お金は多めに払ってでも日本人を雇いたいが、日本人はもう来てくれない」

 まるで、今の若者が軟弱だから悪いみたいだな。だって地方でしょ。ふつうに若い人間が、少子化&過疎化で少なくなっただけ。だいいち同じ記事で、

「若い人がいなくなる中この制度には助けられた。雇用の問題は地方では切実。企業が来てくれないと、若い人の職はなく定住はしない。豊かな自然だけでは生きられないんですよ」

 若者が集まらない理由わかってんじゃん。


 おおざっぱにいうと、左が食品安全主義で、右が食糧安保論、で共通するのが地域主義。農業にかぎらず外国人労働者を入れて地方の活性化ができるってことらしい。ま、マスコミは都市に住んでる者がほとんどだから、外国人を入れた場合の社会的リスクは気にならないんだろう。外国人労働者からの搾取を問題視する向きにいたっては、欧米並みに農業補助金を増やせなんてとんでもないことを言い出すやつまでいるんだから、狂ってるな、もう。それこそただの保護主義で、結果として途上国からの搾取だろうが。保護主義で、途上国をたんなる資源輸出国にとどめてしまえば、テロリストや軍閥まがいの愚連隊連中の思うつぼなんだけどな。
 朝日のこの記事のように外国人労働者に依存しなければやっていけない産業は止めて、ぜんぶ輸入にきりかえるべきなんだ。そうすれば途上国も農産物を輸出することで外貨を稼ぎ、国民所得を増やせるだろう。豊かになったらテロリストやゲリラですら必要なくなる。左の人たちもどうせ平和主義を唱えるなら、こういう風に考えられないのかなぁ。