道路特定財源が一般財源化されると

建設業の社会福祉的側面(すなふきんの雑感日記)
……はっきり言って建設業界というのは産業界の「底辺」を支えるものとしての機能を果たしてきたのは疑いようもない事実だと思う。その意味ではわが国において社会福祉的側面を強く持っていたというのは当たっていると思うし、セーフティネットをなおざりにしたままこの底辺部分=社会の基底層とも言うべき部分が崩壊してしまえば、深刻な社会不安につながりかねない懸念は強い。

 道路特定財源は、一般財源化されるみたいだ。前にこんなことを書いた。タイトルは多分原田泰さんあたりのパクリ。そのとき田中の角さん以来の道路財源が、地方への効率的な所得再分配機能をもっていたのではないかと考えていた。それはすなふきん氏がおっしゃるように建設業が、相対的に「競争力の低い」労働者への社会福祉的機能を果たしていたのと相似形だと思う。
 福田総理は、今回道路財源を一般財源化し、暫定税率を維持して環境税のような役割を持たせるつもりのようだ。一見、地方なり土建業者なりに配慮したかのようだが、小泉改革三位一体改革以来つづいてきた流れ(結果としての「地方切り捨て」)にトドメをさすことになるのではないか。小泉路線には否定的なことを言って総理総裁についたはずの福田氏だから、これは皮肉な結果ではないか。世論にうまく乗っかってきた小泉元総理の劣化コピーみたいに、世論におもねるようなパターン(薬害肝炎問題が典型)ばかりの現状に、心中いかばかりであろうかと思わざるを得ない。


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(3/31追記)
 どうやらすなふきんさんやみんなが話題にしている大元は、日経ビジネスのこの記事みたいだね。

……いい時は700万円あった年収も、今は一級の国家資格を持っている腕利きの職人でも350万円程度。普通の会社員から見ても決して高くない。だから職人のなり手がいない。こんな職業に夢が持てるか。

 スキルの高い職人さんには、適正な報酬が保証されないとスキルを磨くインセンティブが働かないから問題だが、彼ら「腕利き」の収入が下がっているのはデフレ不況のせいでしょ。だから循環要因であって構造的なものじゃない。むしろ問題なのは、上記インタビューで触れられていない相対的にスキルの低い人たち。公共事業とそれにまつわる談合は、こうした弱者にも仕事をあたえてきた側面もあって、まさにこれが社会保障的な機能を代行していたわけ。
 もし市場に任せるならば、適正な労働供給になるまで調整せざるをえない。でも建設業界の場合それは福祉の削減と同義になる。福祉を切れば行き着くところは社会不安で、進学も就職もできないから駅のホームから人を突き落とす、みたいなことが起こる。犯罪件数はさして増えていなくても、その動機に社会不安は表出するはずだ。
 はてブのコメを見ると、やはり同情的な意見はそれほど多くない。ダンピングだろうと適正な水準まで工費が下がっただけだってな感じ。こういう市場原理もデフレ下でなければ有効なんだけどね。この想像力のなさは恐ろしいね。