「制御できないインフレ」と「バブル」

 
ジンバブエの惨状はあまり報道されてないよね。彼の国のインフレの原因は、以下の記事にもある通り、はっきりしている。

中銀は今年1月中旬、インフレ対策の一環で、「1000万」ジンバブエ・ドルの紙幣を発行。政府は生活必需品の値上げを禁止する政策を打ち出したが、これが逆に売り惜しみなどを招き、経済混乱に拍車を掛けている。長期独裁政権を敷くジンバブエムガベ大統領は、白人系が所有する約5000個所の農場を没収するなど強硬な経済政策を打ち出し、農業生産が激減するなどの失政を続けている。

インフレ率は世界最悪の「2万4470%」、ジンバブエ(CNN)

生産物=商品が少ないのに、貨幣の量が変わらなければ、当然物価は上昇する。こうなってしまったら、生産力に見合うレベルまで貨幣価値を下げ(貨幣価値を保ったまま量を減らすという手もあるが、これはデフレになる)、規制緩和など生産性を上げる政策(これこそが構造改革)を採るしかない。にもかかわらずジンバブエの中銀は札を刷りまくり、価格統制など規制強化に奔ったために、ウン万パーセントという凶悪で、ほとんど制御不能なインフレを招来してしまった(もう政権ごとぶったおすしかないような)。
そういえば、一昨年くらいまで日銀は「消費者物価をゼロにしておかないと、制御できないインフレを招く」という見解を示していた。「日本がアルゼンチン化w」と同じレベル。日本人のインフレ恐怖を逆手にとって、金融緩和を拒否する口実としたワケ。さいきんは「制御できないインフレ」を「バブル」と言い換えているようだ。さすがに今「日本がジンバブエ化」って言っても誰も相手にしないだろうし。
でもこれも実はウマい言い方で、恐怖心に加えて、日本人が抜きがたく持っている、汗水を伴わない金儲けを嫌悪する性向をもうまく利用している。しかも、「インフレ」にちゃんと定義があり、ジンバブエみたいに原因がはっきり観察できるのに対し、「バブル」にはそれがない。イメージだけ。実態のない枯れ尾花を脅しに使えるんだからこんなぼろい話はないってこと。
バブル(なんてモノがあるとして)それ自体ではなく、金融政策の度重なる失敗が、十数年もの低迷を招いたと総括できなかったせいで、こんな子供だましがまかり通っているのだ。