「セクロボ」は、深夜枠ならイケたかも


セクシーボイス アンド ロボ vol.3 [DVD]

セクシーボイス アンド ロボ vol.3 [DVD]

番組サイト (http://www.ntv.co.jp/sexyvoice/

原作改変しまくりでも佳作

このドラマは、原作が好きだったこともありよく見ていた。視聴率的には惨敗(平均一桁)だったが、作品そのものの評価は高い。一般ウケしなかった理由としてウィキペディア等では、原作を大幅に改変したことを指摘している(作品タイトルの「セクシーボイス」のフレーズが、劇中いちども言及されない)が、最大の敗因は、主人公をニコ(大後寿々花)から、ロボ(松山ケンイチ)に変えてしまったことだろう。所属事務所の力関係(松山はホリプロ所属)で、ロボの見せ場を増やさざるを得なかったのだろうが、これがあらゆる面で足枷になったのでは。原作通りの設定にしていれば、ずいぶん良くなったはずだ。
それでもこのドラマは、よくできていたと思う。マツケンロボのキモオタっぷりは良かったし、大後寿々花は脇のベテラン役者にも負けない上手さだった。原作連載時期との時代状況のずれも、うまく現在化できていたと思う(テレクラだけは仕方ないが)。コミカルな演出ながら、各エピソードに普遍的なメッセージが込められてもいる。

幻の第7話(VOICE7)

今回とりあげたDVDには、放映中止になった幻のエピソードが収録されている。放映直前に起きたたてこもり事件を連想させるというのが中止の理由だったが、たてこもりだから問題なのではなく、お話の方向性が犯罪者に同情的だと見られることを恐れたのだろう。結果、放映済みの回(VOICE2)が再放送され、ますます平均視聴率を下げることになった。

大後寿々花に期待

結果論なら何とでもいえるが、このドラマはもっと遅い時間帯の短い時間枠でやったほうがよかった。そうすれば「深夜枠としては異例の人気」なんてことになったかもしれない(深夜ならニコ主人公も可能だった?)。
 松山ケンイチが、これで評価を落とすことはないだろう(実際、ほうぼうで露出しまくり)が、「主演に等しい健闘」と評価された大後寿々花が、結果的に数字の不振の責めを負うのはあまりにもかわいそうだ。映画の仕事などはあるようだが、他ではとんと見かけない。ぜひTVでも、彼女に次の活躍の機会が与えられることを願ってやまない。