もちろんフィクションなんだけど〜『闇の子供たち』



ちょっと圧倒されてしまった。
ここに出てくるような、生きている子供を臓器ドナーにしてしまうという臓器売買が事実としてあるわけではないんだろう。だが、もう一方で描かれる児童買春−−農村部の貧しい家庭がわずかな金で我が子を売春宿に売り、子供たちは外国人たちの欲望の道具にされ、ある者は薬でショック死し、ある者はエイズに感染して捨てられる−−が、まぎれもない現実であることをおそらく観客の大半は既知であろう。
にもかかわらず、ショックを受けてしまうのは、あまりにも生々しい虐待の描写(幼い少年を犯す中年男のたるんだ尻の汚さときたら……)のせいもあるだろうが、前述の臓器売買のような一歩間違えばトンデモな事象と組み合わせて提示されることで、嫌でもわれわれ日本人が、加害者の側なのだということを意識させられてしまうからだ。
つまり、我が子の命を救うために他人の子供を犠牲にしなければならないとしたら? あるいは身近な人がそうした状況に追い込まれたなら? という問いをつきつけているのだ。



今、まさに日本では、子供の脳死者からの臓器移植を認めるかどうかが議論されている。それが許されることなのか否かは措くとしても、国内での臓器移植をもっとやりやすくしなければ、海外で移植手術を受けようとする人びとを押しとどめることはできないだろう。
将来的には、完全に人工臓器に切り替えでもしなければ、根本的な解決はムリだと思うが、今なにもしないのなら、われわれ日本人は、貧しい国の子供たちの命が金で売り買いされる状況を容認するのか? と問われることになるのだ。