政府紙幣について

 政府紙幣については、いろんな人がすでに書いてらっしゃるのでどうかという気もしたんだけど、「政府が円天を発行するようなもの」という発言が与党議員(津島雄二氏)から出て来るとは思わなんだ。財務省の意にそったものだか知らんけど、暗黒卿に「中学生以下」と罵られますよ。まあ、せいぜいワイドショーのコメンテーターレベルの発言。政府が発行した「円天」なら、それは「円」と同じだよ。みんなが、「政府が発行した」ことを疑いさえしなければいいんだから。

                                          

Q 弊害はないの?

A 政府紙幣が発行できるようになれば、与党からの歳出圧力はますます高まり、財政規律が失われる危険がある。また、政府紙幣の大量発行は市中に出回るお札の流通量を急増させ、急激なインフレを引き起こし、通貨の価値が低下する懸念もある。


政府紙幣:景気対策の財源として関心 インフレ、通貨価値損なう恐れ−−Q&A | 毎日.jp(毎日新聞)


 ありがちな反対論としては、これぐらいだろうが、そもそもインフレを起こしてデフレ脱却するために発行するんだし、通貨の価値が下落する=円安だから万々歳じゃん。
 あとは「財政規律が失われる」だけど、「財政規律」って定義の曖昧な概念意味不明だよな。

 財政を放漫に運営するのではなく、秩序正しく運営するための規律。(……中略……)財政規律とは財政収支を均衡することだけを意味しない。国民のニーズに合致しない無駄な公共サービスを供給せずに、国民に適切な租税負担を求めるという意味での効率性を実現することも財政規律に含まれる。
( 神野直彦 東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授 )


財政規律とは | みんなの知恵蔵


 ほんっとに曖昧意味不明だなw 解説してる人物も微妙だしww wikipediaにも項目がなくて、『知恵蔵』。「財政収支の均衡」以上の意味が「秩序正しく」とか、まったくつかみどころがない。*1
 最後の一文は、「国民のニーズに合致」とか、「適切な租税負担」とか、さらに定義が必要な概念がでてくる。ていうか「無駄な公共サービスを供給せず」が言いたいだけちゃうんかいという感じ。
 

 自民党内には政府紙幣を持ち出すことで、日銀に「通貨価値が損なわれる」との警戒感を抱かせ、国債買い入れの増額など財政政策への一層の協調を日銀に迫る思惑もあるようだ。


政府紙幣:景気対策の財源として関心 インフレ、通貨価値損なう恐れ−−Q&A | 毎日.jp(毎日新聞)


 政府紙幣がこのタイミングででてきたのは、日銀へプレッシャーかける狙いがあるのかね。でもその結果出てきたのが株式の買い取りじゃあね……。

追記

 「マリファナ」発言について。これも「円天」と同じ穴かと思ったら、聞き捨てならんことを言ってるな。

 伊吹文明財務相は「日本銀行以外に政府が紙幣を供給すれば円の価値が下がり、大変なインフレを招来する」と指摘。「政府紙幣はマリフアナと同じ。実質成長率の引き上げを放棄し、名目成長率で国民をだますことは政治家として受けいれてはいけない」と批判した。


政府紙幣「マリフアナと同じ」=自民各派で批判相次ぐ | 時事ドットコム


 伊吹文明って元大蔵官僚だっけ。この人の言い草では、名目成長率(the nominal economic growth rate)は、nominal=名ばかりのゴマカシで、実質成長率(the real economic growth rate)こそreal=真実の価値ある物かのように聞こえる。
 これも中学の社会科で習うレベルだが、ある国の経済活動によって生み出された付加価値を金額ではかったGDP成長率(=名目成長率)を物価上昇率ぶんだけ割り引いたのが実質成長率。つまり実質成長率とは名目成長がまずあって事後的に算出されるものに過ぎない。こういう奴に限って、金利の話をするときには実質値を無視するんだよな。国民をだましてるのはアンタのほうじゃないのか。

*1:そもそも収支の均衡なんて、家計や企業だって目指してはいないでしょう。