朝日新聞社が赤字転落だって

 J-CASTで取り上げてたけど、朝日新聞が創業以来初の赤字転落らしい。記事の中で『FACTA』12月号からも引用していたけど、やっぱり冒頭だけwだったし、個人的にもちょっと驚かされたので紹介しとこう。


 朝日新聞の売り上げが右肩下がりに落ちているというのは、『FACTA』では前から結構しつこく書いていて、その主な原因は、広告収入の激減。

 今年1〜9月の朝日の広告収入は前年同期比16.9%減と、読売(16.1%減)、日経(10.9%)に比べて下げ幅が大きい。広告需要の急減に加えて、広告スペースを埋めるための単価下げ(ダンピング)に見舞われている。ある大手出版社の広告(全5段、全国)を例にとると、「日経は480万円、朝日は360万円の見積もりを持ってきた」(幹部)。かつて業界一の掲載料を誇っていた朝日が日経の4分の3とは驚くばかりだ。


▷▷▶ FACTA online | 朝日新聞――初の「赤字転落」の非常事態


 ここは正直驚いた。朝日が業界一の広告掲載料を誇ってたのはごくごく最近のことでしょ。ぼくの居た零細出版社では、とんとご縁がなかったけど(泣)、朝日の全5といえば「1本」が通り相場。例に出されているのは出版社と書いてあるから、おそらく掲載面は2、3面。で、「大手」となると定価は多分もっと高いはず。それが、360マンって……段単価の間違いかと思ったよ。日経の4分の3(日経全5の480マンは平日料金かな?)ってことより、この値引率に驚くばかり。
 ただ一応言っておくと、出版社の広告料金を例にとって、「ダンピングヒドス。朝日ヤバス」みたいな事をいうのは、ちょっとフェアじゃないかもって面はある。
 何故かというと、新聞の1〜3面(4面が含まれる事もある)というのは出版社広告の指定席と決まっていて、他の業種は広告出稿できないんだな。そして出版社はその広告スペースの1等地である1〜3面に(より目立たない4面以降にしか出稿できない)他業種よりも割安で広告を出せる。それは、「出版文化を保護する」という建前があるからなんだけどね*1。まあ言ってしまえば、見栄と痩せ我慢ですな。*2
 ご存知のとおり十年来続く出版不況で、出版社は他業種に比べても相当広告費を絞っているので、全国紙でさえ恒常的に1〜3面は埋まりにくい。だからといって他の自動車とか、保険とかの広告を入れるわけにもいかないとなると、残るは広告単価の値下げ、それも出稿してくれる出版社が出てくるまで下げに下げるしかない(もうタダでいいや、もってけドロボー!みたいなことすらたまにはある)。だから出版広告というのは他業種に比べて、ダンピングの度合いは大きくならざるを得ない構造があるんだよね。
 朝日の広告収入が厳しいというなら、他の業種からも取材するべきかなぁ(小声)とはちょっとだけ思う。


 それはさておき、大手の新聞社はいくら本業が不振でも、好立地の不動産をたくさん抱えているから当分は大丈夫ってのは、よく言われるけど、どうもそうでもないらしい。

 不動産事業の目玉である「中之島プロジェクト」。大阪・中之島の大阪本社を200メートルの超高層ビル2棟に再開発し、賃貸ビルとして稼ぐ目論見だが、1千億円と見込んでいた建設費が鋼材高騰などで数百億円も跳ね上がるうえ、米国発の景気悪化に伴うオフィス不況が懸念されている。朝日は東棟の完成を当初の予定より半年早め12年秋に前倒しすることで、周辺の再開発ビルラッシュに出遅れることなくテナントを確保する方針だが、西棟については当てにしていたホテルの入居が決まらず、「延期の可能性がある」(秋山社長)という有り様だ。


 東京ですらオフィスビルは厳しいのに、大阪だもんね。


 で、結局はリストラしかない、と。

 全国の府県庁所在地にある地方総局に記者を一律配置し、県版を編集してきたのを改め、東京、横浜、千葉、さいたま、神戸、京都、奈良、山口など人口、部数の多い11総局を「都市圏総局」として記者を手厚く配置する一方で、それ以外の総局の記者は減らす。そのモデルケースとして09年4月から富山、鳥取の2総局を10人程度に絞る。
 本社にいるベテラン記者の地方配置も今年から始まり、テレビ朝日ニュースステーション」のコメンテーターだった高成田享論説委員石巻支局長に異動。高成田氏はともかく、本社に滞留し、無表情、無気力で働かない40〜50代の幹部が増えている。
 若手社員は、働かない上層部を「死にかけのゴキブリ」と、隠語で呼ぶのだそうだ。この「ゴキブリ族」を地方に「下放」する作戦だ。さらに県版から複数県を束ねたブロック版への転換、泊まり勤務の削減、西部本社からの整理部撤退、さらには西部の支社化または分社化なども検討課題に浮上している。


 「下放」ってww 朝日らしい隠語ですな。高成田氏は「ともかく」って、逆に何か含むところでもあるようなw まあ、あの方の経済コラムはかなりアレなのでしょうがないかw

 印刷局を別会社化した新会社「プリンテック」への出向社員500人超を転籍させる案も俎上に載っている。朝日本社から切り離して、給与水準が本社より低いプリンテックの待遇で雇用する目論見だ。


 出版局も別会社にして切り離しちゃったしなぁ。朝日新聞出版社の給与水準はそれほど下げてないんだろうけど、非正規雇用が山ほどいそうだし。

 役員の一部には「経営体力の弱い産経と毎日が倒れるまでの辛抱」を説く者もある。いわば同業者の生き血を吸って生き残る「残存者利益待望論」である。


 いるんじゃないかとは思ってたけど、やっぱりこういうこと考えてる人がいるんだね。ANY連合はその現れなわけだけど、毎日・産経だって、そうそう思惑通り潰れてはくれないんじゃないかな。地方紙はバタバタいくかもしれないけど、地方じゃ吸うほどの生き血(部数)も残ってないだろうし。で、連合した結果が日経・読売と紙面の見分けつかなくなりました、では、部数も広告も余計にズルズル落ちるだけって気がする。

*1:地方紙とかでは(あ、産経もだな)、この建前は崩れてきていて、1面に学習塾とかの広告があるのは良い方で(塾なら一応マジメっぽいでしょ)、苦しい新聞社だと、チェーンストアとか保険とかの広告を入れざるを得なかったり、それすらもなかなか入らなかったり。

*2:「出版文化は『特別に保護』すべき大切なもの」というのは再販制度維持のための大義名分でもあるので、新聞社としては絶対に引っ込めるわけにはいかない事情もあると思う