ローカリズムの先には何が(ネタバレ注意)

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 TV放映してたのを観たが、事前のイメージとしては、うどんで町おこしというありがちな話かなと。主人公たちがうどんブームを起こすまでの奮闘と、ブームに踊らされる人々がコミカルに描かれ、やがて弊害が表面化、ブームが去るが、主人公たちはそれでもうどんの伝統文化を守るために地道に……とまあ何ともベタな感じだが、TV屋さんがつくった映画らしくサービス満点で、まあ笑わせてはくれた。


 ブームが去るあたりの描写が弱いなという印象があったのだが、最後まで観て理由がわかった。おそらくそこには、安易なローカリズム礼賛映画にはしないという制作者の意図があったのではないか。
 ラスト近くで主人公の松井香介は、頑固一徹のうどん職人だった父の跡を継ぐのかと思いきや「ここには夢はない」と、かつてのコメディアンになるという夢を叶えに、再びニューヨークに行ってしまうのだ(映画冒頭で、香介がニューヨークのショーパブみたいなところでスベりまくる場面があった。挫折する様子がわざわざ描かれたのは、ラストの成功と対比させるためか)。
 みんながみんな田舎に縛られては不幸だから、出て行ける奴は外の世界に出た方がいい、と言いたいのであれば、途中でブームの盛衰をしっかり描いてしまうと、たんなる「うどんの映画」になってしまうということだろう(観るとうどんを食べたくなる「うどん映画」には違いないのだが)。フジテレビのつくる映画には、ときおりこういう経済的にシビアな視点が見られる。「バブルへGO!!」なんかもそういうところがあった。


 沈滞する田舎の活性化は、非常に困難な仕事なのに、運良く上手く行ったケースを極端に称揚(プロジェクトXとか)したり、誰でも同じように成功できるかのように描く作品はあいかわらず多い。地方の苦境を訴えることに価値がないとは言わないが、こういうローカリズム幻想を煽るのはいい加減にせいやといつも思う。
 本作は、その手垢にまみれたパターンを崩そうとしたのかもしれないが、その先に新たな価値を提示できたかどうかは微妙だ。地元を出た香介はニューヨークでスターになり、ヒロイン(小西真奈美は完全に「萌え要員」だった。メガネっ娘、麦わら帽子&白ワンピのコンボw)は作家になる夢を叶えるのだが、いささか説得力に欠ける。田舎を捨てて都会で成功する確率はそんなに高くないからだ。新しい試みが中途半端に終わってしまったのをちと残念に思う。