もし、次の総選挙で民主党政権になったら


今騒ぎになってる日銀総裁人事に民主党が反対している問題について。ぼくは国会戦術としての野党の「何でもハンターイ」戦法そのものをけして否定はしない。だから「財金分離」などというもともとイミフな話はただの反対のための口実なんだからどうでもいい。
しかし、党幹事長ともあろう人が、以下に示すようにこんな非常識なことを公言するようでは、日本の恥さらしになることは我慢してやるにしても「絶対こんな連中に政権は渡せない」と言いたくなる。たとえ彼らに政権担当能力(これもイミフなワードだなw こういう書き方するとまた嫌われるんだろうな)があったとしても。

これからの金融政策はどうあるべきか、そのためにはどういう考えの持ち主が望ましいかという本質論を議論すべきです。その前提としてこれまでの金融政策を総括すれば、1.異常な超低金利政策で300兆円を超える利子所得を家計部門から企業部門に移転させた、2.毎月1.2兆円の長期国債買い入れを行い、日銀を国債引き受けマシン」にした、3.金融政策の正常化が遅れ、世界的な金融市場の混乱に対し身動きができない状況を招いた、というのが金融関係者の一般的な見方です。


quote a sentence from:鳩山由紀夫メールマガジン 335号

伊藤(隆敏)氏は通貨価値を安定させるという日銀の目的からみてふさわしくない


quote a sentence from:鳩山由紀夫メールマガジン 338号 


金利政策で利子所得を移転させたというが、デフレで物価が下落し続けて、実質的に所得が増えていることを無視して300兆円って数字がどこから出てくんのよ。文中の他のところでは、預金金利が低くてお年寄りが〜云々と書いている(年金受給者って言えよ、イヤらしいw)が、つい最近まで、年金にインフレスライドはあってもデフレスライドはなく、受給者はむしろトクをしていたことをどう考えるの?
トクといえば、金利が上がってトクするのは、金持ちや、現金を漫然と貯め込んで投資運用などの努力をいっさいしない守銭奴。逆に住宅ローン組んでる庶民は大打撃で、その結果、あなた方が大キライな格差がますます広がるんですが。わかってます?


国債引き受けにしても、それが通常の金融政策の手段なんだってば。この程度の額で「引き受けマシン」呼ばわりされたら、どこの国の中銀も金融調節なんできなくなっちまうよ。
それでいてさらに金融政策で打つ手が無い苦境を招いたとか言われてもねぇ。これだけ長期金利が低くてデフレなんだから(アメリカは日本と逆で、カネ刷ったらすぐインフレになるから、今FRBは苦労してるワケ)どんどん貨幣供給すればいいんです。それをこれまで日銀が変に引き締めスタンスに立ってサボってただけ。その意味では、現執行部に責任はあるっちゃあるが、かれらに金融緩和のインセンティブを与えるのは政治の役目じゃないの。


最後に、伊藤隆敏さんへの反対理由は論外。日銀の目的は「物価の安定」*1です。
金融政策が、結果として為替を動かすとは言えるが、為替レートは他国の金融政策の結果にも依存するから、個々の中銀に通貨価値を安定させる能力なんかないよ。
こういう勘違いして「伊藤氏はインフレ目標論者だから問題」とかほざくんだから、いったいどこから説明してやればいいんだよと途方にくれてしまう。

追記

 本石町日記さんのところでこんな記事を知った。

(デフレと戦う)ためには、マクロ的な金融政策も重要である。日銀は、すでに大規模な量的緩和を実施しているが、こうした政策を継続・強化し、デフレをストップ(中略)具体的には国債買いオペの増額、適格担保の範囲拡大などを積極的に検討すべきである。


quote a sentence from:2003/01/29民主党ニュース【次の内閣】当面のマクロ金融政策について(抜粋)


上記は2003年の記事。しかし最近のものに目を転じると、民主党ネクス財務大臣中川正春氏がこんなことを。

日銀の国債買い切りオペレーションをこれからも継続するという武藤氏の方針について「その判断は日銀トップにふさわしくない」と断言した。


quote a sentence from:2008/03/13民主党ニュース【衆院本会議】武藤氏に過剰流動性招いた反省なし 中川NC財務相


過剰流動性wはともかく、国債買い切りオペの「継続」すら許さんですかそうですか。まあ突っ込みどころであることに変わりはないけど。

*1:日銀法の第一条で、「日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的」とし、第二条で、「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」とある。ここで通貨の調節とはもちろん国内の通貨の流通量の調整ということで、外国通貨との交換レートのことなど一切出てこない