努力の方向ちがいが招いた?「痴漢冤罪でっち上げ」

 
痴漢のでっち上げはよくあると言われているが、でっち上げた側が虚偽告訴で逮捕ってのはレアケースかも。
痴漢被害でっち上げ、女と共謀の男子学生逮捕(YOMIURI ONLINE)
痴漢ねつ造、「被害者役」自首で発覚 容疑の大学生逮捕(asahi.com)
痴漢でっち上げ、女は泣き崩れる演技も(nikkansports.com)
電車内の痴漢については、容疑者が否認しても被害女性の訴えだけでバンバン逮捕・起訴するのが最近の流れ(追記:NHKのニュースによれば、冤罪の増加も10年ほど前からの傾向らしい)。「チカンは犯罪です!」という大々的なキャンペーンまで行われたのは、どういう力学が働いたのだろう。

  • 痴漢被害が激増し、警察当局に批判が集まるなどのプレッシャーがかかった
  • 手っとりばやい検挙率アップを狙っていた警察上層部と現場がこれ幸いと眼をつけた

などが考えられるが、もう一つ、

という要素は考えられないか。証拠は無いんだが。
痴漢被害を減らすことが目的なら、本来対策としては、女性専用車つき車両の増発、そもそもの混雑の緩和などが採られるべきで、これらはすべて鉄道会社がやるべきこととなる。にもかかわらず、実際行われたことは懲罰強化、何でも逮捕・起訴という下策中の下策である。冤罪の増加は当初から懸念されていたはずだ。ぼく自身、ずいぶん前に女性専用車の導入の方が効果的だと、大学のゼミだかサークルだかで議論した記憶がある。(追記:前出の通り、冤罪の増加は10年ほど前かららしいから時期的にも一致する)
現状を改善するために本来採るべき策を鉄道会社が怠り(一部で女性専用車両とかやってたけど)安易な懲罰強化へと奔らせたのではないか。狙ってやったとまでは言わないが、そうした各プレイヤーの思惑が複合的に影響して誤った対策がとられ、痴漢被害は減らないわ、冤罪どころかでっち上げまでが増えるわという最悪の事態を招いたのではないか。


てなことを考えたのも、ある著名なブログの、このエントリがアタマにあったからだ。

改良の誤謬(レジデント初期研修用資料)

記号であることを受け入れた技術には、正しく変化すべき方向がある。
「一般化」と、「微細化」、「不可視化」。変化はこの方向へ為されなくてはならない。
技術の世界にも、たぶん「赤の女王仮説」が通用する。走りつづけることで、初めて技術は、そこに止まれる。走ることを止めたり、努力する方向を間違えた技術は、飽きられたり捨てられたり、あるいは既得権益者扱いされて叩かれて、悲惨な結末を迎えてしまう。
テレビゲーム、医療や教育は、変化が要請されない、記号化した技術。こんな分野が、何となく衰退したり、叩かれたりしている理由というのは、たぶん「止まった」ことによる自壊であって、マスメディアや訴訟みたいな外的要因は、技術が正しく「走って」さえいれば、問題にはならなかったのだと思う。
「戦艦」という考えかたを記号として受け入れたなら、技術者はその延長線上に、安価な航空機の群れであったり、空母すら必要ない巡航ミサイルみたいなものを想像すべきで、大きな大砲積むとか、絶対沈まない戦艦とか、そんな「改良」された何かを見てはいけない。

これは科学・技術の改良のハナシだが、法律や交通機関などのオペレーションにも応用可能だと思う。痴漢防止を一つの技術体系だと考えれば、「一般化」「微細化」「不可視化」される正しい改良変化の方向とは、女性専用車の拡充や混雑解消などであるべきで、何でも逮捕・起訴の懲罰強化は大鑑巨砲型のような努力する方向を間違えているのだ。
鉄道会社としては当然負担が大きいが、長期的に見ればなんとしてもやるべきであろう。「オフピーク通勤」ポスターとか貼るだけではなく、時間をずらすことにインセンティブを付けていく方策を考えるべきだし、もっと言えば、企業を含めた社会全体がフレックスタイム化していくことが、正しい方向ではないかと思う。