里帰りしてみると農政の杜撰さは確かに目に着くね

ずさんな農地行政が農業の自壊を招く:日経ビジネスオンライン


 それよりも重要なのは、今、大変な不正が起きているということです。農業の最大の問題は、農地と労働で違法・脱法行為が急拡大していることです。転用規制も税制も、法律の条文はどんどん無視されます。
 耕作放棄して雑種地になっていても、農地と称して相続税を逃れる。いかがわしいダミー農業生産法人が農地を買い漁っても歯止めがありません。農地法の規制が新規参入を阻害しているというのは、私には信じられない話です。問題の本質は、農地規制を骨抜きにする者がトクをして、真面目に農業をするものが報われないということです。


 いかがわしいどころか、日本を代表する大企業までがその農地を買い漁ってきたんだと思う。ぼくの故郷(ちょい田舎ぐらいなレベル)に帰ると、かつて田畑だったところに、超巨大かつ超広大なショッピングモールが偉容を示していたりする。幹線道路(といっても片道一車線の部分もあるレベルの道路)沿いとはいえ、郊外と称するのさえちとはばかられるような土地のどこにそんな需要があるのかしらんと思うのだが、実家の親に聞いてみると休日にはその幹線道路が買い物客のクルマで大渋滞してかなり閉口するらしい。周辺の飲食店なんかは道を塞がれて死活問題という話だ。
 実家もいくらか農地を所有していて、一部は近所の農家に貸して耕作してもらってるが遊んでる部分もあるので、一応努力してるとはいえ上記記事で批判されてる偽装兼業農家の端くれではあるのかもしれない。耕作してくれる人がどんどんいなくなるんだからしょうがないんだけど。時折、駐車場だの住宅業者だのが土地を貸してくれとかいってくるらしい。道路沿いにまとまった農地を持ってる近隣住民のなかには、売ってしまった所も多く、そうした土地はパチンコ屋とか運送業者の配送センターとか、ヒドいのになると産廃まがいの土?が山と積まれたなんて話も昔はあった。


 そしてショッピングモールである。パチンコとかならともかく、あそこまで巨大なものができるとなると、さすがに「あれだけの土地をどうやって?」という気がしてくる。いつも引用させてもらって恐縮だけど、『FACTA』の最新号にこんな記事があった。某イオンはもはや小売業というより、土地を掻き集めてショッピングモールを作る地上げ、もといデベロッパー事業が主体になりつつあり、そうとう強引なことをしてきたらしい。
 

イオン――農地「蚕食」型成長に限界:FACTA online


 実はイオンのデベロッパー事業は、「1物2価」の農地価格を養分にしている。戦後の農地解放と52年の農地法で、日本は農家が農地を保有する「自作農主義」をとった。農地であれば固定資産税や相続税を優遇、価格も商用・住宅地より大幅に安い。その代わり農地転用に規制を設けたが、地目を変えれば地価がはね上がるため、各地の農業委員会で尻抜けが横行。減反政策と高齢化でやる気を失った兼業農家は、不動産収入をあてにするようになった。
 仕組みは都市再開発やゴルフ場開発と変わらない。地元の不動産業者などを「農地の地上げ屋」に使って仮登記などで土地を確保、農業委員会に転用を認めさせ、農地としては高めだが商用・住宅地としては安く買収するか、借地契約を結ぶ。そこに巨大SCを建て、それを担保に資金を調達、次のSC新設に回す ――壮大な開発サイクルである。イオンには農水省OBの「農地のプロ」がいて、地元農協や自治体、農政局などに働きかけているという。


 日経ビジネスの記事によれば、兼業農家がやる気を失ったのは減反政策と高齢化のせいではない*1ようだが、それはまあいい。
 問題は、チンケな地上げ業者がちまちま農地を買ってるなんてもんではなく、イオンみたいな大企業が政治力まで使って地上げまがいのことをやり、とてつもなく広大な農地が潰されてるってこと。農地を潰したあとに建てられたショッピングモールが、今後も地元の雇用に役立つならまだしも、イオンの経営状態からしてそれも厳しく、あとには不毛の地が残されるだけ、そのうえ地元農政までがその過程に手を貸し、農水省はまるっきり放置プレイだとしたらちょっとヒド過ぎる話だ。



 

*1:あからさまではないものの、『FACTA』にも兼業農家に批判的なトーンは感じられる。ま、農家そのものをあからさまに批判するのはそれだけ難しいということか。