日本のショービジネスをいかに育成するか


http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20080703/p3
 id:HALTANさんの産業としての日本の映画が置かれている環境についての上記エントリに、以下のようなぶくまコメントをした。

2008年07月03日 ko_chan 映画, 産業, *ブログで言及する 日本映画を税金で保護する必要は無いかもしれないが、人材(役者、演出家、プロデュース)を公費で育ててもいいと思う。義務教育の段階から演劇を教えるとかね。
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20080703/p3

 このコメントの真意というか、そのとき念頭に置いていたのは、広義のショービジネス全般のことで「義務教育(ていうか初等教育)の段階から演劇を教える」の部分に力点がある。元々もっていた問題意識がHALTANさんのエントリを読むことによって関連づけられたような感じ。
 で、ぶくまコメントにたいするHALTANさんからのレスポンス。

 現在でさえ既に映像関連の教育機関は飽和状態で、卒業生がそれなりのクラスの映画・TV・CMなどの現場に就くことは著しく難しくなっている

 これについては、まあそうなんだろうなぁと思う。その種の教育機関については詳しく知らないけれど、「出口」としての映像関連産業の状況をみれば、難しいのはわかる。
 現在のデフレ不況をなんとかすれば、すこしはマシになるかもしれないけれど、それは成長局面での資源配分が最適化されることで実現するんだろうと思う。つまり「ココにいるよりも別の業界のほうが出世できそうだ」と人材が流出し、結果、映像関連産業が適正規模に調整されるってこと。

 だから結局、日本のショービジネス全般が比較劣位産業なのかもしれない。でも、言語という貿易障壁がある以上、全部海外からの輸入に切り替えるわけにもいかない(追記:いまや時代劇ですら海外から輸入可能という笑えない状況だが、それでも日本語のコンテンツは必要だろう)。じゃあ国内産業としての日本ショービジネスをいかに保護育成するかが問題。それで、教育につながるわけです。

 日本は演劇教育のスタンダードがどうも存在しないようなんですね。詳しくは知りませんが、向こう(米国)はストレートプレイでもミュージカルでも一応の標準があるらしいのです。
 日本はアマもセミプロもプロも大学も養成所もそれぞれの場所で講師たちが経験則的に養成や稽古を行っているのが現実みたいなんですよね。

 これもおっしゃるとおりで、バレエなどを例にあげるなら、日本では欧米の見よう見まねから導入されてきたせいで、基本的な部分においてすら教え方がてんでんばらばらという状況がいまだに続いてる。民間のバレエ団が年少むけの教室も同時に抱えて基礎の教授も行うなんて日本だけで、海外では国立のバレエ団、バレエ学校があるのが当たり前。
 小・中・高校での教育も、指導教員個人の経験に頼り切りで、たとえば小学校ではこう、中学ならこう、といったスタンダードが確立されてない。だから、吹奏楽なんかが典型だけど、優秀な顧問教師が他校に異動するとあっという間に弱体化してしまうなんてことが起こる。

 文部科学省にプロの演出家を集めて答申させて、大体のカリキュラムと教科書から作り直す必要が出てくると思いますね。

 やはり、現状、一部に集中してしまっているノウハウを共有していく必要があるでしょうね。

追記

 日本の映画、テレビを含めた映像関連、ショービジネスが比較劣位産業であるとしても、HALTANさんがいうように「報酬ゼロでもいいから作りたい」という人間が多数居る以上、価格メカニズムは働かず、労働力はもちろん、その他の資本(誰も観ない映画や卒業しても職がない学校)もムダに費消されていく。
 この状況を市場の失敗と考えるなら、政府が介入して業界に労働法規遵守を徹底させた上で(つまり)、ギョーカイ人になるならこのルートという人材養成システムを作ってしまえばいいのではないか。ちょうど、法律家養成の法科大学院が近いのかな(アレは出口としての司法試験合格者数以上に作り過ぎたせいで悲惨な結果になりそうなので、そこは真似しないようにして)。