今日のぽすれん


ナショナル・トレジャー 特別版 [DVD]

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制作のジェリー・ブラッカイマー自身がいうように、派手なアクションと、狡智に長けた犯罪、謎解き、冒険、愛(家族愛も恋愛も)、すべての要素がごった煮。なおかつディズニーが配給可能な程度にPC=政治的正しさ(例えば死人が一人しかでない、それも事故死)もある、まさにブラッカイマー的な映画。ま、こういう何も考えずに楽しめる映画を作れるのは、やはりすごいことなんですが。


リンダリンダリンダ [DVD]

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気持ちのよい青春映画。映像作品で感動できるかどうかは、おおむね音楽にかかっているというか、映画を映像より音声優位で味わうタチなので、こういうバンドやろうぜ的な映画はたいてい好きです。近年でいえば「スイング・ガールズ」なんかがそのパターンですが、本作はちょっと雰囲気が違う。


たしかにペ・ドゥナの演技は味があったし、前田亜季のほどよい芋っぽさとかも良かったし、香椎由宇は初々しくて。でも基本的に全体にまったりオフビートな演出と、文化祭の舞台を目指して、バンドメンバー探し、練習、仲違い、仲直り、そして恋愛などが、「事件」というよりは、ほんとにただの「できごと」という感じで、実に淡々と青春群像が描かれるのですが、その何も起こらなさ加減がすごく良い。オフビート系は個人的にはあまり好きでないのに、この映画はダルくなかったです。
そういえば、ぼくの高校生活も実際こんなふうにゆるーい時間が流れていたよな、ということが思い起こされました。でも、さきにあげた「スイング・ガールズ」が好例ですが、正統派の青春群像劇の文法なら、もっと困難とか葛藤が描かれるのが普通ですよね。例えばメンバーが見つからないとか、辞める辞めないでもめるとか、音楽性がちがうとか、家が借金だらけとか、いろいろな困難にぶつかるんです。それでわからずやの大人や教師たちがありとあらゆる妨害をしてくるのを跳ね返し、最後はステージで「自由」の歌を歌い上げる。カタルシス! だってブルーハーツでしょ?

 
ところが実際は、冒頭でベースの子がケガ(!)で離脱、代わりのメンバーが見つからない、と思ったら、あっさりというか、ほとんど石投げたら当ったみたいなアバウトさで留学生のソンさん(ペ・ドゥナ)が加入。ならばこのソンさんがとんでもない騒動を巻き起こすのかと思ったら、これが実にいい味のボーカルで、ブルーハーツの曲を歌詞の意味もわからないのに「これいいね」とか言いながら歌っている。韓国からの留学生なのに歴史問題にも言及しなければ、文化の違いに葛藤したりもしないし、人種差別なんか影も形もありません。


ここまでやられたら、もう意図的にやってると判断するしかないわけです。もはやブルーハーツの曲に象徴される「社会や大人=教師への反抗」なんて、団塊ジュニア世代のぼくの高校時代ですら、その残滓があったかなかったかという程度で、ブルーハーツというバンドへの評価も「ダサイ」「暑苦しい」という意見が少なくありませんでした。時代がくだって21世紀になった現在はそれすらも消え去って、日本語が相当アヤシい女の子に「良い曲だね」なんて言われてしまう。
でも、これこそが等身大の高校生活なんだな。「抑圧してくる社会=大人への反抗」みたいなわかりやすい「大きな物語」がなくたって、高校生活の日常のなかのちょっとしたイベント=文化祭で、ただ気持ちのよい曲を演奏することで生き甲斐としての物語を紡げる素晴らしさを描いた映画なんだと思います。
本当は、その文化祭さえも「わかりやすい非日常」でしかなくて、それまでのゆるーい日常のなかにこそ面白さ、素晴らしさ、生き甲斐を見つけていきたいところなんだけど、文化祭すら存在しないような、そういう映画が作れるのはもうすこし時代が進まないと無理なのかも。