薬害エイズ問題の難しさ

松村元課長の判決が出ていたが、この事件も総括しきれてないな。こういう薬害事件が陥らざるを得ないジレンマ。血友病患者のエイズ感染問題は、さらに特殊でいくつものジレンマを抱えていた。例の「薬害」肝炎問題を考える上でも重要。
薬害エイズ被害者の抱えるジレンマ

厚生省で検討されている薬害エイズを教訓とした血液事業の再構築では、最大限の安全性確保と同時に安定供給も目指すとされている。日常的には両立をはかっていくことが重要だが、この両立が難しい特殊な状況下で生じたのが薬害エイズであった。結果、安全性の確保より安定供給を優先してしまったことが薬害エイズの原因と言える。
薬害エイズの反省に立てば、突発的な危機的状況が生じ安定供給と安全性の確保の両立が難しくなった場合、できるだけの代替措置を模索し供給を確保しつつ、最終的には安全性の確保を優先し安定供給の犠牲も甘受すべしということになる。それぐらい大胆な方針を掲げなければ、抜本改革は成し遂げられないだろうと個人的には考えている。なぜなら、薬害エイズのときのような不確実な危険性が生じた場合、安定供給と安全性の確保の両立を目指せば、必ず安定供給を優先させる結論に至ってしまうからだ。
しかし、当時の血友病団体の安全性確保に関する要望書のなかでも安定供給が要求されていたように、難病の医療消費者である血友病患者らにとって、血液製剤の安定供給は外せない課題である。ある程度の消費量がある第八因子製剤でも、広く使われているアルブミンと比べれば希少医薬品である。他の血友病類縁疾患用の特殊な血液製剤など、市場原理だけでは、いつ供給がストップされてもおかしくはない。患者団体には安定供給を叫び続けなければならない宿命がある。
そこで、安定供給と安全性確保の両立という目標になってしまい、その両立が不可能になった場合のリスク・マネジメント(危機管理)という議論に入れないでいるように私には思えるのだ。最大限の安全性確保と安定供給を目指す結果、結果として(例えばクリオ製剤などの)代替措置の淘汰が進められ、むしろ血液市場は寡占化が進み、かえって突発的な危険の発生に弱くなってきている感じすらある。